苺祭的遊戯(ショートストーリー集)

「分かったわよ。探してきてあげる」

私は麦藁帽子を被ってから、海の家へと向かう。

ヒコは水着にTシャツで隅っこの方に猫のように自然に横たわっていた。
よく、こうも明らかに邪魔にもかかわらず、誰からも追い出されないわー。

「ヒコっ」

私は立ったまま声をかけてみた。
……本気で寝てる。

仕方が無いので、しゃがんでTシャツ越しに肩を触る。

そういえば、晴菜ちゃん、どうして今日は来なかったのかしら。

「ヒコっ」

途端、ヒコは私の手をがしりと掴んだ。

「……ちょっとっ」

バランスを倒した私は海水の匂いを孕んだまま、ヒコの上に倒れてしまう。

「……おっもーっ」

低い声でヒコが呟く。

「おきてってばっ」

どうでもいいけど、そこらへんの人から見られてるって。
頼むから、起きて。

っていうか、起こすだけでこんなに手間をかけさせるのは辞めてーっ。

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