その笑顔を見ているだけで、凍り付いていた心はあっという間にほぐれていく。

「……そうですね。
 たまには休みましょうか?」

「うんっ。
 たまには私のお兄ちゃんに戻って。
 最近ずーっと留守でつまらないわ」

大学に入ると同時に家を出た。
だから、今までと比べたらずっと、逢う時間は減っている。
それを素直に「つまらない」と言える彼女が、たまらなく愛おしい。


「分かりました」

兄と妹の距離を保てるならば。
少しは彼女の傍にいやすいというものだ。


たとえ偽りでも。

今夜だけは、数年前に戻ったつもりで。
一緒に楽しく遊びましょう。


Fin.