「悪いのは私です。
 都さんではありませんよ。
 だから、そんな顔しないで?
 白瀬のことは忘れてください。
 ね?」

優しく、諭して、その唇に小さなキスを落とす。

「白瀬さん、大丈夫?」

「ええ、大丈夫だって紫馬さんが言ってましたよ」

彼が名医であることは、都さんも認めるところだ。

「分かったわ。
 無理を言ってゴメンナサイ」

だから、そんなにしょげられると、俺の胸が痛むんだって。

「都さんは悪くないんだから、謝らなくていいんですよ。
 一緒に何か、美味しいお菓子でも食べませんか?」

着替えていらっしゃい、というと。
都さんはようやく素直になってくれた。

本当に、優しい子なんだから。
その、優しさを俺だけに向けてほしいなんて我侭。

言えるはずもなくて、俺は。
ただ、都さんの背中を見送るほかなかった。


Fin.