都さんの真似をして、その柔らかい頬を両手で挟む。
ぎりぎりまで、唇を近づけても、もちろん彼女の脈拍数があがることもなければ、頬があからむことさえない。

……少し、長く添い寝しすぎたかな。

反省しながら、長い黒髪に指を絡める。

「いつだって、都さんの一人勝ちですよ」

「本当に?」

「ええ」

俺なんて、もう、とっくの昔にノックアウトされてるよ。

言えない気持ちを飲み込んで、もう一度唇にキスをする。

「だから、今夜はもう、おやすみなさい」

「はぁい。おやすみなさい、お兄ちゃん」

都さんはにこりと笑うと、瞳を閉じる。

いつまでこうやって、無邪気な君でいてくれるのか。
このままで居てほしい思いと、一刻も早くオトナにさせたい思いが。
俺の中で拮抗している。


でも、とりあえず、今夜のところは。
いつものように、このまま、ぐっすりお休み。

男と女の複雑な関係なんて、何も知らないまま、俺の腕の中で。


Fin.