都さんは瞳も閉じずに、唇を離した俺の胸に再び顔を埋めてきた。

彼女にとって、キスは挨拶代わりでしかないし、こうして抱きついてくるのも、幼子が親に求める行為と同等だと、分かってはいる。

……分かっている、つもりでは、いた。

でも、ダメなんだ。

君にとっては、挨拶代わりの行為でも。
俺にとっては、性的刺激を呼び覚ます行為になってしまいそうで。

それを抑えるのに、持ちうる理性を総動員しなきゃいけない。
いい加減、それももう、壊れてしまいそうなんだ。


だから、ゴメンね、と。
心の中だけで呟いてみる。


こうやって、添い寝してあげるのは、来週。
君の誕生日が来るまでにさせてもらえないかな。


その次に添い寝するのは……。
君と身体を重ねるときだ。

そのときにはもう、君は俺のことを「お兄ちゃん」なんて言う愛称で呼ぶことさえなくなっていると思うよ。


……そうじゃなきゃ、困る。

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