「あ、そや」 何かを思いついたように、突然携帯を握りしめたまま、部屋から立ち去る。 冷たい廊下を歩きながら、携帯にイヤホンを装着する。 階段をゆっくり降りながら、大音量で音楽をイヤホンで聴く。 光陽の耳には音楽が流れているせいで、リビングから聞こえる罵声は聞こえない。 そう、光陽は一階に降りるときは必ず大音量で歌を聴く。 両親の喧嘩が耳に入らぬように……。