「…………本当に私たちは、もう終わりなのですか?」
 駅のホームで電車を待っている時、隣にいた女の子が声をかけてくる。声はどこか上擦っていて瞳には涙が溢れそうな程に溜まっていた。
「……ああ。そうなるだろうな」
 俺は素っ気ない返事を返す。その言葉に女の子は顔を俯かせた。
「ですが、拓也さん」
「良いんだ。渚。これはきっと俺に対する罰なんだろうからな」
 渚の言葉を遮り、俺は首を横に振る。何度も考え決めた答えだ。いまさら迷ってはいられない。
「……拓也さんが可哀相です」
「だから言っただろ? これは俺に対する罰なんだと。誰も俺を許すやつはいないさ。俺自身、許されたいだなんて、望んでない。だけど後悔もしていない。何せ渚を守る事が出来たんだからな」
 自分なりに精一杯笑って見せたが、そこは長い付き合いか強がりだと分かるらしい。
 とうとう瞳から涙がツーっと流れてしまったのだ。そしてそれをきっかけに、涙が次から次へと零れ落ちていく。
「泣くなよ。渚」
「そんなの無理です」
 渚の頭が俺の胸に落ちる。さすがの渚も泣いている顔を見られたくないのか、下に向いたままだった。
「こんな事をしても、拓也さんを困らせるだけだと分かっています。ですが…」
 それ以上、言葉が出ないのか服を握り締め泣き続けていた。
 そんな渚にかけてやれる言葉が見付からず、ただ背中へそっと手を回し気が済むまで、泣かせる事しか出来ない自分に少し苛立ちを覚えた。
 どれくらい時間が経っただろう。
 新幹線がやってきて二人の髪を揺らす。
 そして渚が俺の体を押しのけ無理矢理に微笑んで見せたが、その目が赤く腫れ上がっているのが分かった。
「それじゃ…さようなら。拓也さん」
 渚は駆け足で新幹線へと乗り込んで行った。
 一度も振り返らなかったおかげで、呼び止める事をせずに済んだ。
 その時一瞬見た渚の表情が今でも心に残っている。
「…………ん。夢か。懐かしいな」
 もうあれから三年経ち高校一年になる。
 朝からブルーになりながら、のっそりとベッドから起き上がった。