晴明を挟み込むように2人で寄り添った前鬼達は、炎の中をじっと見つめた後で冷や汗を流した。

「旦那…この方はウチらには手が出せねーぜ。」

「ああ全くだ…この方は鬼の王、私達はこの方に逆らうことは出来ません。」


口を揃えて答えた二人に、晴明は不思議そうな顔で聞き返した。


「何故だ?数だけの問題では無いというのか!?
…では一体この鬼は何者なのだ!?」


晴明の言葉に鬼達は顔を見合わせてしばらく考えているようだった。

その後に青髪の後鬼がゆっくりと語り始めた…。


「…この方の名は酒呑童子、八叉の大蛇の息子にして人間との混血の妖…。
生まれた時から鬼の王として君臨し、他の鬼達は彼から力を得ているのです。」


後鬼が語る言葉に偽りは無い事を、晴明は十分に理解していた。

日本神話でしか聞いた事の無い八叉の大蛇…その直系の子孫たる鬼。人間に勝てるのかと、思わず晴明は唾を飲み込んだ。