そう言ったものの酒呑童子はなかなか続きを話そうとはしない。

不思議に感じた透は声をかけた。


「どうした?お前らしくないな。望みなら沢山あるんじゃないのか?」


酒呑童子は背後からかけられた声に、頭をガシガシ掻きながら答えた。


『そうなんだが…気が変わった!坊主、お前の望みを先に聞きてえ…。変われ。』


「何だよそれ…。俺の望みは…天照大神、貴女に対してだ。」


「わらわに?申してみよ。考えは読めるがあえて聞こう。」


透は酒呑童子が見つめる中、天照大神に向き合って話し始めた。


「今回の件で人間達は未来を再び歩めるようになった…。だけど人間達の行いのすべてが正しい方向に向かっているとは思わない。
これはスサノオによって教えられた事だ。だから、貴女には人間達が間違った方向へ向かわないように見守って欲しい!導いて欲しいんだ!
…俺の仲間達が笑って暮らせる生活、それが俺の望みだ。」


「…そなた達は無欲じゃな…。人間とは自らの望みを叶えるためだけに発展してきた、そう思っておったが…。」


「俺は仲間達に沢山の幸せをもらった。沢山笑うことが出来た。それはあいつらが居てくれたから…。だから俺は最後にあいつらの為に願ってやりたかったんだ。」


そう言って透は拳を握り締めてうつむいた。