「それは…確かに否定できません。ですが!」


「ワシ等が天岩戸を開かせる事を遅らせる事が出来たなら、他に手の打ちようがあるかもしれん。
だが奴等は障害となるワシ等を生かしておくはずがない。…その時は誰が指揮を執ることが出来る?
ワシのような老骨が残るよりも不動君のように力ある若者を最後の希望として残したいのじゃ。頼む!」


元は幹矢の言葉を最後まで聞かずに頭を深々と下げた。


「水嶋様…僕にただ待てと仰るんですね…。
それがいかに辛い事か解らない貴方ではないでしょう?
仲間が戦うのを黙って見ていられるほど出来た人間ではありません。」


「…そうか…では仕方ない、許してくれ不動君。」


幹矢が元の申し出を断った数秒後、切なげな表情で顔を上げた元は素早く印を切った!

幹矢が目を見開いて何をする気か確かめようとした瞬間、背後にグンと引っ張られる感覚に襲われ、視界が薄暗い闇に閉ざされた!


「何を!?意識はある、ここはどこだ!?なぜ自由に体が動かない!」


必死にもがく幹矢に元はゆっくりと語りかけた。


「聞こえるかね不動君?すまんが妖怪影男を召喚させてもらったよ。
今の君は影男とすり替わって自分の影の中におる。体は逆に影男の支配下じゃ。
…この術はワシが解くか、もしくはワシが死んだ時に効果が消える。強制的な手段で本当に申し訳ない!」


元は自分のワガママに対して許し難い行為だと理解しながらも、そう謝罪してその場を後にした。

影の中の幹矢の訴えはこちら側には届かないままに…。