「く…そ!痛みが無いってのはやっかいだな…鵺が無敵に見えるぜ…。」

透は口元から流れる血を拭いながら絞り出すように呟いた。


「それは言えるかもしれんな。あやつなら首だけになっても向かって来そうだ。
…これで沙綺を入れてこっちが3、数では有利だが戦力差はさほど変わらないだろう…。」


月読はせめて幹矢が回復してくれればと祈りたい心境だったが、鵺から受けた不意打ちはかなりのダメージがあったはずだ。
早急にというわけにはいかないだろう。


沙綺との距離は開いている。立ち位置としては鵺達を挟み撃ちに出来る態勢だが、鴉天狗が背後を警戒しているため安易に攻撃が成功するとは限らなかった。


鵺は鴉天狗の横まで来ると歩みを止め、透達を見下した視線で話しかけた。


「私とここまで渡り合った人間は2人目です。
どちらも神楽一族…そう、1人目は貴方の父親である玄奘です。」


「俺の…親父だと…?」

そう聞き返した透に向かって鵺は頷くと、一つ思い出したかのように続けて話し出した。


「そう言えばまだ話していませんでしたねえ?裏切り者の話を…。」