ことばのスケッチ

(2)
 あれから何日たったろう。辺りがぼーと見える。私が「オギャーオギャー」というと、何時も大きな顔が現れて、口に何かを入れてくれ、お尻のベトベトをとってくれる。やっと私のことばが通じるようになった。私の顔の前を動くものがある。これは一体なんだろうとそれを見た。
「あなた!目が見えるようになったみたい」
「どれどれ、本当だ指の動きを目で追ってるよ」
「ブルブルバア」
《何だ、広い空間で動いているものは?》
《なんだか、気味が悪いな!》
《襲いかかってくるかも知れない!》
《目を離さないように真剣に見ていなきゃ!》
「おい、まばたきもしないで真剣に見てるよ」
「どれどれ」
《恐いよ!》
「そろそろ玩具を買ってやらなきゃ」
「ブルブルバア」
 なんだか動くものが急に無くなって、大きな笑顔が見えた。
《ああよかった、恐ろしいものがなくなって!》
「おい、笑ったぞ」
《ああ疲れた!》