ことばのスケッチ

私の体が宙に浮いて、同じようにゆらりゆらりするのだが、なんだか体が落ち着かない。暫く我慢をしてみたが、なんだか体が落ち着かない。体が落ち着かないよと「オギャーオギャー」と声を出してみた。急にゆらりゆらりが大きくなり、上下にも揺れ出した。違うよ、ゆらりゆらりはいいんだよ、体が落ち着かないんだよと「オギャーオギャー」と声を出してみたが通じない。例によって一段と大きな声で「オギャーオギャー」と何度も声を出してみたが、揺れが大きくなるばかりで通じない。あまりの苛立ちに私もいささかかんしゃくを起こして、「フぎゃ-フぎゃ-」と本心をぶっつけてみた。
「おいおい、とうとう泣き出してしまったよ」
「抱き方が悪いいんじゃない」
「ちゃんと、言われたとおりに抱っこしてるよ」
「ただ可愛い可愛いだけじゃなくて、赤ちゃんの気持ちになって抱っこしなきゃ」
「そんなこといったって無理だよ」
「どれかしてごらん」
 また私の体が揺さぶられながら宙に浮いて、ごつごつしたところからふわりとしたところへ移動したようである。体が落ち着いて、ゆらりゆらりが気持ちいい。
「さすが、女性にはかなわないな」
「そりゃそうよ、経験者だから」
「眠ってしまったようね、篭の中に下ろそうか」