ことばのスケッチ

《今ごろ友達は何をしているのだろう?多分母が作ってくれた食事をしながら、家族揃って楽しく団欒しているだろう。一体自分は誰と語り合えばよいのか?》
スーっと立ち上がり、窓の外をみた。屋根々の下からかすかに明かりが漏れている。
《多分この屋根の下でも、楽しそうにしているんだろうな。だめだ耐えられない》
そして又部屋の真中に座った。
《一体自分は誰と語り合えばよいのか?》
壁の前に正座した。新築したばかりのこの壁は真っ白である。目を大きく開いてその壁を凝視した。
《何故自分は独りぼっちでこの部屋にいるのか?何故そうなのか?何故?何故そうなのか?》
そのまま時が過ぎる。
《アア、疲れた》
手枕をして畳の上にごろりと横になる。腕時計の音がチチ、チチと聞える。自分と一緒に居る唯一の生を感じさせる音である。それ以外に何も聞えない。今ごろ家族は何をしているだろうか?だめだ、時計の音がうるさい。部屋の中を見回した。誰も居ない。そして起き上がった。そして目を大きく見開いて壁に向かった。壁に小さなシミが一つある。それをジーっと凝視する。シミは次第に大きくなり、又次第に小さくなる。
《アア、疲れた》