ことばのスケッチ

「まあいいさ。少なからず誰でも持っていることだから。そのうち必殺仕置き人が出てくるだろうよ」
「科学の進歩で、随分便利になったね」
「科学の進歩のおかげです」と、私はそっけなく応える。
「どうだね、蝋燭の時代に戻れると思う?」
「それは無理だろうよ。第一暗いし、電車もないし、電話もない、テレビも無いし」
「要するに、一度便利な暮らしをしたら、後戻りできないってわけだ」
「それがどうした」
「つまり人間には不可逆性ってものがある」と彼は自ら、興奮する話題へと軌道修正した。
「電気のおかげで人類は変わったね」
「そのおかげで人類滅亡へとアクセルを踏んでいるとは思わないかね」と彼は、少し興奮気味になって、二本目のタバコに火をつける。
「環境破壊の源ってわけだ」
「化学もそうだね。環境破壊の源だよ。高化学物質を大量に排出するし、それを処分すると有害物質が出るし」
「人類にとっちゃ有害だけど、宇宙にとっちゃ痛くも痒くもないね」
「まあまあ、真面目に話せば、有害ってことは誰でも知っているんだけど、一旦便利な生活をしてしまうと止められないね!」
「蝋燭まではいかなくても、せめて、電話とテレビぐらいにしておけばいいんだけど。大企業は無造作に大量に電気を使って、公害物質をせっせと生産している」