ことばのスケッチ

「隣の奴、声がでかすぎないかね」と彼が言い、
「奴は馬鹿だよ」と私が応える。
「どうやら、会社の話しだね」と彼が言い、
「これじゃ嫌われるよ、回りのことも考えないで、大きな声を出しやがって」
「奴の注文聞いたかね」と、彼は言った。
「何を注文したんだ!」
「スタナミ料理さ」
「スタミナじゃないの?」
「スタナミだよ、スタナミ!」
「我々もこれからはスタナミにしよう」と私が言い、
「そりゃいいね、マスタースタナミ一丁か」と彼が応える。
「そろそろ、ママのところへ行くか!ここじゃ話が通じないよ、やかましくて」と言って、二人は出る。出かけに彼は
「ここは俺が払う」
「それじゃ、ママの所は俺が払うよ」と私が応え、居酒屋を出た。ママの所は、この居酒屋から十メートルほどのところにある喫茶店である。居酒屋を経由する何時ものコースである。この喫茶店は、ガラス張りで、通りからは中が丸見えである。「今日も二人で居たわね」と、会社の女性によく言われる。ガラス戸を押して、
「ママ、今晩は」と彼が先に入り、
「何時もの席が空いてる!」と私が後から入る。この席は、部屋の隅にあって、通りから良く見えるゆったりとした席で、二人のお気に入りの席であった。二人の水を携えて、何時もの女性が注文をとりに来た。