《自分が座らないのなら、多少回りに気を配って、どうぞと言って私に手を差し伸べてくれれば、中年の女性に席を取られることも無かったのに。ツーンと顔を突き出して、男性にちやほやされる方だねこの女性は。年寄りとはいえ、私も男性だ、そう思はなくちゃ。なんだか誇らしい気分だね。年寄りを労わると言う固定観念は捨てなきゃ。それにしても、足腰が痛いことは解って欲しいよね。だめだね、そんなことを思っちゃ。目の不自由な人だったら、席が空いたことも女性の姿も見えないんだから。目を閉じて、そう言う雑念は捨てなきゃ。後三十分我慢しよう。ここまで我慢したんだから。その内この親子も降りるかも知れない》



