次の駅で、例の男性が降りた。私の隣の吊革に掴まっていた中年の男性に期待を寄せた。その男性も私と同じように、席が空くのを我慢強く待っていたらしい。躊躇することなくその座席に座った。そして、ズボンに靴が擦れないように、膝を遠ざけて座っていた。暫くしてその男性は眠りに入った。二つ隔てた吊革の前の座席が空いたままになっており、その吊革に、若い女性が掴まっている。思い切って、「よろしいですか?」と声を掛けようかと思った。私よりも先に、中年の女性が「よろしいでしょうか?」と声を掛けて座った。
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