エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》

―――そして投函されたもう一通の手紙は…勇の母の弥生から火菜の母の望に宛てられたものだった。

もうその頃は谷川家の周りを黒沢が部下に取り囲むように車を停めさせ、いかにも見張っています。と言わんばかりのいやがらせをしていた。

しかも玄関前にはテレビ局っぼく大きなアンテナを天井にのせたワゴン車を停めてまるでこの前の仕返しと言わんばかりの心理戦で揺さ振るつもりらしい。

モチロンこの仕打ちに腹の立たないわけじゃないが、望はただ耐えるしかないと思っていた。

それは、ちょうど思春期で難しい年ごろの子供たちが何も訳を聞かずに

「お母さん 頑張れ!」

と応援してくれるおかげでもある。

相手も盗聴しても意味がない事ぐらい分かっているハズだ。

お互い警察には通報出来ない弱みもあるし、だからこれは根比べのようなものだった。

すると望宛てに一通の手書きの手紙が届いた。

裏を返すと差出人の名前は書かれてない。

しかし望は、その優しい女性文字でなんとなくピンときた。

急いで開封してみると、やはり弥生からだった。

望は胸が熱くなって神に感謝した。