エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》

美佐子はもう一つのラウンジで黒沢とも待ち合わせをしていた。

すでに黒沢は到着していて、かなり待っていたのだろうラッキーストライクの吸い殻が5本もあった。

「シン。ゴメンね遅くなって。でもヤツと話して良かったわ。収穫もあったしね。」

「それは良かったですね。でもまず旦那の手紙にはなんと書かれていたんですか?」

黒沢はまずそれを聞かなければと美佐子に迫った。

美佐子もそんなシンの気持ちがよく分かるので先に教える事にした。

「手紙はね…確かに中条の筆跡で書かれていたわ。内容は告発のデータを弥生に託しているのでもう中条家はおしまいだ。というような事が書かれていたの。でも最後の方は字が乱れていて読むのがやっとだったから恐らく、吉永になんかの薬を注射されて中条は感付いて最後のあがきで手紙を書いたんじゃないかしら…。」

「でもそしたら病院内に旦那の協力者が必要ですよね!朝方に急変したのでボスの部下とは考えづらいですね。」

「そう!そうなのよ。外部の者が間に合うハズないわ。それに手紙は中条が亡くなってすぐに投函されたのなら翌日、葬儀の前に着く恐れもある。そしたらこっちは弥生たちの脱出を阻止出来たわ。だから中条はわざと葬儀の翌日に着くようにと依頼したハズなのよ。」

「そーですね。それを吉永医師が依頼されたとは考えられないですか?」

「私もその事もあったから今日、吉永を呼び出したんだけど、自分にトドメをさした男に頼まないでしょう。吉永はシロね。それに普通のナースでもいくら入院患者の頼みでもそんな頼みは引き受けないと思うし、やはり“金”が動いているわね……。」