エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》

『ブラック・エンジェル』と呼ばれ主に入院患者の排泄の世話をしていた。

相手が老人だろうが、重病人だろうが依頼があれば手や口を使って一万で抜いてやる。

だから夜勤の時はかなり先まで予約が入っている程の人気ぶりだ。

男性の体の仕組みは女性にはなかなか理解出来ないだろう。

例え老人だろうが、重病人だろうが、“死”が身近に近付けば近付く程、男という生きものは『生』を求めて『性』を欲する。

ただしその欲望を自分のパートナーに満たしてもらえる男性は少ない。

なぜならここは病院だし……。

そこに目を付けたのが、ブラック・エンジェルだ。

ただし入院患者にはいくらお金を積まれても本番はしない。

本番は医師とだけと決めている。

病院では良心的価格なのに医師からは高級コールガール並みに高い金を取った。

それでも引くて数多の人気ぶりで、吉永は美佐子の代わりに抱いていたつもりが今ではすっかり彼女の虜になっていた。

吉永は心の中で

(案外、アンタの旦那も彼女の世話になってたりしてな。)

とほくそ笑んだ。