エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》

その頃、谷川家では泣きじゃくる望を必死に夫の谷川がなだめていた。

「ああ 何も連絡がないという事は三人とも捕まってしまったんじゃないのかしら…。やはりあの時、屋敷に助けに行っていれば…。」

望は夫に八つ当りをしている自分自身に嫌気が差しながらも、その感情を押さえる事が出来ずにいた。

谷川にはその気持ちが痛い程分かったので今は気持ちを吐き出させる事にした。

「だって自分の子供が人身売買されると分かってて平然としていられる訳ないじゃない……。」

そう言うとまた泣きじゃくる望。

途中で娘が帰宅したが、母親の取り乱す姿に驚いて無言で部屋へと直行した程だった。

そこに自宅の電話が鳴りだした。

すると引ったくる様に望が受話器を掴んで言った。

「もしもし! もしもし!」