「もしもし、美佐子か!? 今からうちに帰るぞ。すぐに迎えに来てくれ。」

大輔は既に担当医から、外泊の許可を取り、美佐子へと電話を掛けた。

「えっ!? お戻りになるんですか?大丈夫ですか?」

予期せぬ大輔の一時帰宅に美佐子は驚きを隠せなかった。

「当たり前だ。明日の取引をちゃんと見届けない方が気を揉んでストレスになる。ワシの病気はストレス性なのは判っているだろうが!」

病気をダシに使われると何も言えなくなる美佐子だったが、どうせならこの機会にと医者の進める他の精密検査を一切拒否していた大輔なので、娘としては……

ハイ。そうですか!

とはいかなかったが、ココは折れるより他になさそうだと諦めた。

「分かりました。それじゃあ今から、迎えに参ります。」

電話を切ると、美佐子は隣りにいる黒沢の顔を見て、やれやれと渋面を作った。


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