エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》

「みこと、元気にしてた?」

命の母は久しぶりに見る我が子の顔を見ただけで瞳を潤ませた。

「ああ、元気だよ。そっちこそバスで来たんだって!?こんな台風の日に危ないだろ。」

ぶっきらぼうだが、思いやりの感じられる息子の言葉に成長を感じて、父母は胸が熱くなった。

「大丈夫だよ。それより本当にお前には辛い想いばかりさせて悪かった。」

「本当にゴメンなさい。」

二人は揃って頭を下げた。

「そういうのは止めようよ。俺も少しだけ大人の事情とやらも理解出来るようになったし…。」

「命、変わったわね。表情も柔らかくなったし、好きな子でもいるの?」

そういう事は母親は見逃さない。

命も隠さずに話す事にした。

「児島未来って言うんだけど、つきあってるんだ。」

「そう!出来れば会いたいぐらい。」

「会えるよ!隣りにいるから、連れてきていい!?」

「ああ」

「もちろんよ。」

命はすぐに火菜を呼びに出て行った。

「まさか、彼女まで紹介してくれるとは、やはり君の言う通り来て良かったよ。」

「でしょ!でもちょっとだけショックよ。彼女がいるなんてね。」

世の母親なら誰しも息子の彼女には会いたいような、会いたくないような複雑な感情を抱くのかもしれなかった。