エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》

「うん。うん。そして?」

相づちが上手い。

望は普段からそう感じていたが、窮地の時にそれをやられるとどれだけ心強いかアナタ知ってる?

ほら、もう私、震えてないし冷静になれたわ。

話しながら、右脳は別の方向から夫を分析している。

そしたら、話しを聞き終えた谷川が

「うーん。それは大変な役目を背負ったな。ちょっと待って少し考えさせて。あっ!そうだ君はいま弥生さんの手紙を読んでみたら。」

と言うので望は

「そうよ!すっかり忘れていたわ。ちょっと待ってね〜今、開けて読んでみるから。」

新聞に挟み込んでいた手紙を読む事にした。

望は電話の向こうで頭を抱えている夫の邪魔にならないように、最初は声に出さずに読んでいたが

「ちょっとアナタ聞いて!」

「えっ!何て書いてあるの?」

「弥生さんも取引をする様にって書いてるのよ。やはり私に橋渡し役をして欲しいって」

「そうか、やはりそれが一番の解決方法なのかもしれないな。」

「あっ それとねパソコンの掲示板でやり取りしましょうと書いてあるわ。クスッ ハンドルネームまで書いてあるわ。」

「何?望だからホープとかだったりして…」

「当り!ベタよね。弥生さんはマーチよ。」

「ほーっ ベタベタやな。」

その瞬間、遠く離れた新潟でくしゃみをした親父がいた。