エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》

トントントントン…。
 トントントントン……。
  トントントントン………。


さっきから玄関のドアが叩き続けられている。

もう、この家だと絞りこまれたのだろう。

訪問者はノックを止めるつもりはないようだ。

もう源には最後の選択肢しか残されていなかった。

モチロン踏み込まれる瞬間まではあきらめない。

こちらから降参して出ていく事はしないが、そうだと分かったら奴等もピストルでドアノブを打ち抜くぐらいの荒技でこの俺を確保するだろう。

まさにその瞬間になったらこのケータイには悪いが反対にひねって折れてもらうしかないな。

源は覚悟を決めてケータイを握り締めてその時を待った。

それから30秒後、しつこく続いていたノックの音がピタっと止んだ。

―来るぞ!!

源はケータイを開いて両手で握りしめた。