エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》

「よし!今なら大丈夫だ。」

源は一か八かで勇のケータイにかけてみた。

追っ手はもうこのアパートメントに源がいると分かったようで、先程から外が騒がしくなっている。

後は10軒あるアパートの1軒ずつを尋ねていって二階の203号室が源の潜伏先だと炙り出されるのはもう時間の問題だった。

もし、そうなれば窓から飛び降りて逃げるしかないが、恐らく裏にも人が待機しているハズで正に絶体絶命のピンチにある源だった。

どうやらケータイのGPS機能が仇になっているようで、何でだ!?と源は考えていた。

なぜ、番号が知れた……?

………飯島か?

決してそうは思いたくはないが、そうとしか思えない。

―いや、仲間を疑うのは止めよう。

とりあえず、時間稼ぎのために電源は切ろう。

そしていよいよ、捕まるならその時はケータイを真っ二つに折ってデータを消さないとみんなに迷惑をかけちまう。

源は苦渋の決断をして電源を切る前に念のため最後の望みを懸けて勇へと発信したのだが………答えは相変わらずNOだった。

後5分、後5分早かったなら運命はまだ変えられたのに……。