《源の出来事》


その頃、源は知り合いのアパートメントに静かに息を潜めて潜伏していた。

どうやら美佐子と黒沢が放った追っ手たちはもう、すぐ近くまで迫ってきているようだ。

昼間、近くのスーパーに約三日分の食料品を買い出しに出た帰り道、向かいのドラッグストアで通行人に写真のような物を見せて話する男性の顔に見覚えがあった。

―あれは確かに美佐子の部下に違いない。

源は買い込んだ食料品をしっかと握りしめて、冷静かつ敏速にネグラへと向かったが、途中、付けられてないかと周辺に気を配りながら帰るのを忘れなかった。

しかし、もうここも危ない。

次はどこへ逃げればいい?

焦る気持ちとは裏腹にその答えはなかなか出せずに、ただ息を潜めるしかない源だった。