「美佐子スマン。俺は…。」

吉永が何やら言いだせずにいるので、美佐子は早くもイラっとして

「何がスマンなの!?梓と関係のあった事を黙っていたから? それともその梓に逃げられた事?」

と問い詰め出した。

吉永は益々、恐縮して

「本当にすまない。あの時に教えていれば良かった。」

と言うのがやっとだったが美佐子は容赦なかった。

「そうよ!あの時、手を打てばどうにでもなったのに…。アンタのせいよ!! 何が俺に惚れてる女よ!アンタの方が入れ揚げてたくせに! そして何?あの女は中条に何を聞いて、何を預かっているの?」

「……預金通帳だ。確か四千万程ある。弥生とやらと後子供たちにそれぞれ一千万ずつ渡す様に中条さんから指示されてた。残りがあの女の駄賃だ。」

それを聞くと美佐子はもう怒りを隠そうともせずに、いきなり吉永を恫喝した。

「本当に馬鹿な男だよ。その金を二人で分けようと思ったんだろ!そして逃げられた!! アタシを裏切ったね。もう許さないよ!!」

咄嗟にひざまづいていた吉永は美佐子の足元にしがみ付いて

「スマン。許してくれ〜美佐子ォ〜。」

と擦り寄ろうとしたが、美佐子はすかさず足払いして倒れた吉永の頬を黒の10センチヒールの踵で踏み付けた。

「もうお前は用ナシだ。地獄に落ちろ!」