電話を切り終えた後、


「どうした?」




と葵が言った。




「椎奈にはお見通しみたい…今から来るって」


「愛心――――――!」


それはもちろん椎奈だった。


「椎奈っ」


「愛心…ごめんね…先生を説得させるのにめちゃくちゃ時間かかっちゃってさ…ってなんで葵がいるの!?」



椎奈…葵は助けてくれたんだよ◇

「別にいたって良いじゃん」



葵は少しすねぎみに言う。


「ところで、何があったの?」


椎奈は心配そうな表情をしている。



「椎奈…海斗が来たんだ…」



もう“海斗”って言う単語も出したくない…



「えっ…なんで…」


椎奈は声も出せない状況みたい…



それからあたしは玄関にいて海斗に声をかけられて、路地裏に連れて行かれて…キスされて…そこを葵が助けてくれた事も話した。




「…ごめんね…愛心…私が…今日先生なんかに言わなかったら…ごめんね…」


椎奈…泣いてるの?


抱きしめられてるから椎奈の表情は分からない…



けど…肩も震えてるし、鼻もすする音が聞こえる。