加納欄の合コン シリーズ10

”お礼をいただきますよ。お礼は簡単です。大人しく、私に抱かれればいいだけです”


一瞬にして、フラッシュバックした。

あの時の光景がよみがえった。

「いやぁ!」

あたしは、思わず大山先輩を突き放した。

「欄?」

大山先輩が、驚いて、あたしの手首を掴んだ。

「いやぁ!放してっ!」

あたしの声に高遠先輩が、急ブレーキをかけ振り向き、大山先輩の頭をバコッと叩いた。

「仁!なにサカってんだよ。欄が嫌がってんだろ」

「違うって!突然怯えたんだよ。欄!しっかりしろっ!欄っ!!」

「あ……」

あたしは、大山先輩の声で正気に戻った。

「あ……。す、すみません……なんでも……なんでも、ないんです」

「欄……」

「ホントに……。大丈夫ですから」

あたしが、笑って答えたから、大山先輩は、それ以上聞かなかった。

高遠先輩も、また車を発進させた。


あたしは……。


大山先輩に愛してもらうしかくなんてナイ……。


あたしは……。


裏切ったんだ……。


あたしは……。


孔明師範に……。


孔明師範に……。


それに……。


大山先輩があの時キスしたのは、一時の感情で、愛情なんかじゃない……。


あきらめるなら今だ。


決めたんだから。


あたしは、大山先輩の想いも知らず、ひとつの恋を終わらせようとしていた。



―おわり―