「ふぁあ〜」
中学受験当日。
緊張し過ぎて眠れなかったアタシ。

「おはよう、亜矢」
「貴也おはよう」
アタシは双子の妹、宮原亜矢。
そして、双子の兄、宮原貴也。
アタシたちは今日、同じ中学を受験する。

「おい亜矢、受験票ちゃんと入れたか?」
「あっっ!忘れてた!どこだぁ?」
双子とはいえ、二卵性だから性格は全然違う。
貴也はしっかり者で、アタシは少しマイペース。
「お前なぁ・・・」
「ごめんごめん」
呆れた様子の貴也に、謝るアタシ。
いつものパターンだ。

アタシたちには親がいない。
母親はアタシたちを産んだ代わりに死んでしまった。
そして、再婚した父親。
でも、再婚相手に浮気されて、別れてしまった。
行き場所を失い、アタシたちを育てることに疲れた父親は、自殺した。
でもアタシたちは、二人で支え合って、楽しい毎日を過ごしている。
親がいなくても、少しも違和感がない。

「ほら、準備できたか?」
「うん、バッチリ!」
アタシたちは自転車に乗って、受験会場へと向かった。

「あぁぁ!筆箱・・・」
もうすぐ会場だというのに、アタシは今更忘れ物に気付いた。
「まじかよ!?」
「うん・・・どぉしよぉ」
「俺のやつ、貸してやるよ」
って言って、アタシに鉛筆と消しゴムを差し出す貴也。
「あ・・・ありがと」
素直にお礼を言って受け取った。
貴也に借りた鉛筆は、少し古いアニメの鉛筆だった。
そして、消しゴムはサイコロ。

ちょっとダサいなぁ・・・なんて思いながら、テスト用紙に名前を書いた。
スラスラ〜
予想以上に塾で習った問題のパターンが多く、順調に解いていける。

あっっ、漢字間違えちゃった・・・
消しゴム、消しゴム・・・
あぁっっ!
消しゴムが床に落ちてしまった。
先生来るのも恥ずかしいしぃ・・・
えい!拾っちゃ・・・え?
「ん」
隣の男の子が拾ってくれた。
「あ・・・ありがと・・・」
そして、男の子はまた問題を解き始めた。

「終わったぁ!」
やっと受験が終わり、アタシはリラックス♪♪
「おぉ、亜矢!どーだった?」
「まぁまぁかな・・・貴也は?」
「俺もまぁまぁ・・・」
なんて言いながら、笑顔になるアタシたち。
「よし、帰るか!」
「うん!」