Security Abyss 1

「あんなものは簡単に解除できるんだがな」
「……」
「……。」
「……」

再び携帯電話の話になり、罪悪感から鞍玲は口を閉ざし、押し黙る。しばらく沈黙が部屋に満ちる。

「さっきも言ったように、簡単に言えば私はお前の悪意だ。正確に言えば、悪意によって世界にある穴が広げられた隙間だ」
「出来るって、どうやってよ」

それぐらいしか、鞍玲に今言えることはなかった。

「オラクルを使う」
「オラクル?」
「神託機械とも呼ばれている。もっとも、この呼び方はあまり好かないのだが……」

少しずつ、興味が鞍玲を衝き動かす。

「そのオラクルってのは何なの?」
「知る必要はない、鍵のようなものだ、行くぞ」
「え、ちょっと、行くって、え」

世界が極彩色になる。