Security Abyss 1

鞍玲には、1歳年上の彼氏がいる。同じ中学校だったがその時は面識が無く、今の高校に入り初めて互いに知り合った。同じ中学校だったという縁から始まり、付き合うようになった。最初は上手くいっていたのだが、そこは女の勘、最近鞍玲は素っ気無さに怪しさを感じていた。そこで先日、教室で二人話しているときに、彼氏が席をはずした隙に携帯電話をとっさに手に取り、何か無いかと確認をしたのだ。そこにはオールロックが為されており、術なく元の場所へ戻すしかなかった。

「確認などしなくとも間違いないのだが、一応形式に従わなければならない」

動揺する。なぜこの男は知っているのか。この男は何者なのか。心拍数は上がり、頭は今までに無い回転を見せた。そして得た結論。

「それで?それでどうしようっていうの?」

この男が何者なのか、なぜ一連の出来事を知っているのか、それはひとまず置いておく。これが最適解だと考えた。

「ほう。普通の奴は、名前をしつこく聞くか、情報の経路を驚き半分に問い詰めるものだが」
「……だったら、普通の人のように聞いてみようかしら?」