机の上には先ほどのカバン。椅子には服装を黒で統一した男。顔からは、日本人以外の血が入っているようにも思える。
混乱の後の安堵で、喋ることを忘れていた鞍玲が、思い出したように激昂する。

「ナニ?!いきなり家に入ってきて、あ、靴じゃんそれ!」

鞍玲の視線の先には、編み上げのブーツ。履いている主は当然その男。

「っていうか!!なんなのその」

鞍玲の叫びを雰囲気で押しつぶし、激昂とバランスを取るがごとく、落ち着いた声で男は言葉を並べる。

「……恋人の携帯電話を見ようして、失敗したな?」
「っ……!」