『華緒。』

『香月?』

『ごめんやで…』

『何で謝るん?
香月、どこにいてん』

『華緒、好きやで。
一生お前だけや。』

『かつ…』


会話が途切れて、あの時の香月の叫ぶ声がする。


『華緒!行け!逃げろ!
振り向くなや、行け!』


そして次の瞬間、場面が切り替わる。

目の前にいるのは、変わり果てた香月。

麻弥はただ立ち尽くして涙を流す。

拳が震えて、息が出来ない。

体が熱くなってくる。


『香月イイイ…!!!』


自分の叫び声と同時に目が覚めた。

握り締めていたのだろう、両方の手のひらに、くっきりと爪の食い込んだあとがある。