あの日から、自分が自分じゃなくなった。

死に物狂いで資格を取って、やっと就いた救急救命士の仕事も辞めた。

麻弥にとって、大切な人を救えない自分など、この仕事をしている価値すらなかったのだ。

看護師を目指して非行に走り、介護士として遣り甲斐を見つけて程なく、華慧を妊娠した。

華慧の父親は香月ではない。

苦しんで苦しんで、毎夜泣き暮れた結果は離婚。

以前付き合っていた香月が、麻弥と華慧を救ってくれた。

それを幸せと言わずして、何と言うのか?

その幸せも、あの日に脆く崩れた。

華緒は華緒ではなく、麻弥として生きることになった。

自分の力を試すために、華慧を置いて出てきた。

この大阪の町に。

今の自分の有様など、地元の親には死んでも見られたくなかった。