ふらつく足元に神経を集中して、なんとかアパートについた。

真夏の明け方、空には夏特有の白い靄がかかっていて、何とも幻想的だ。

だが、そんな光景も麻弥の目にはそう映らない。

乱暴にパンプスを脱ぎ捨てて、よろつきながら部屋へ入るとそのままベッドに倒れこんだ。

横になっていると比較的楽である。

薄紫のカ-テンの間から、明け方の空が見える。

その一点をじっと見つめながら、考えごとをするのがこの5年、麻弥の日課だ。

部屋の中には時計が秒を刻む音しか聞こえない。

何もかも無くなってしまった、あの日のようだ。