帰りの車の中で
「伊織でいいよ」
新堂さんは そう言った
「え?」
私が聞き返すと
「新堂さんじゃ固い感じするし、実際オレ名字で呼ばれる事ないし」
伊織
そう彼を呼ぶのは
少し抵抗があった
本来なら 空羽が今日
彼を そう呼ぶはずだったんだ
「いや、でも新堂さん年上だし」
「伊織って呼んでって言ってんだろ」
少し怒ったような口調だったけど、新堂さんの顔は笑ってた
………今日は1日
私が空羽
空羽は私の中にいる
「………伊織……さん」
「『さん』は余計だな」
「………伊織……くん」
「『くん』も要らない」
「伊織………ちゃん?」
私の言葉に彼は吹き出した
「呼び捨てでいいよ。
っていうか『ちゃん』は絶対ないから」
クスクス
いつまでも彼は笑ってた



