しばらく1階のロビーの椅子で待っていると、受付の女性がロビーの目立たない場所にある非常階段らしいドアから出てきた。

そしてドアの方向に手を差し出し、穂高に入るように促す。

非常階段の中に入ると中は真っ暗で、入った途端に鍵を閉められる音がした。

「か、鍵閉められちゃったよ?」

慌てて言うわたしに穂高は平然としたまま階段を地下へと降りていく。

「中からは開けられるから大丈夫だよ。ここはヴァンパイアしか訪れない場所で、外からの人の侵入を管理しているんだ」

「ヴァ、ヴァンパイアしか来ないって…じゃあ、あの人はわたしたちをヴァンパイアだと知っているの!?」

「『ガイア』はイギリスで人間とヴァンパイアの闘いがあった時代に、逃れてきたヴァンパイアたちをこの日本に匿った会社なんだ。もう100年になるかな。この支店には、ヴァンパイアと吸血鬼の混血が多いんだ。さっきの女性もそうだよ」

「!?」

さっきの受付の女性がヴァンパイアだったなんて、かなり驚いた。

そういえば、ママの小説で『ガイア』って製薬会社が出てきたっけ。

たしか社長の名前は……神藤。

予知能力があったらしいママの小説の中では、『ガイア』は今から少なくとも約100年後には、ヴァンパイアの血液を使って不治の病も治癒してしまうような特効薬『カレン』を完成させることになるという話しだった。

100年後の想像なんてつかないわたしには、よくわからないけれど。