学校の裏手から歩いて10分ほどの場所で、穂高は立ち止った。

「なに、ここ……製薬会社?」

こんな街の中心部からはずれたところに、製薬会社なんてあったけ?と首を傾げる。

会社のビルは5階建てで、まだ新しい雰囲気だった。

ビルに据え付けられた看板には、『製薬会社・ガイア』と記されている。

「1年ほど前に新しく支店を建てたんだ。本店は知ってるだろ?」

『ガイア』と言えば、たしか元は『神藤製薬』って会社名で、国内の製薬会社の中では、いまやナンバーワンとも言われている大企業だ。

本店なら街の中心部に見たことがある。

高々とそびえたつガラス張りのビル。

「でもなんで製薬会社なの?」

首を傾げるわたしの手を握る穂高。

「用があるのは、ここの地下だよ」

「え?」

穂高に手を引かれるままビルの入り口に入る。

1階のロビーの真ん中の受付に座っている女性はわたしたちの姿を見ると、ニッコリと微笑んで言った。

「穂高さん、バーへお越しでございますか?まだお時間が早いようですが…」

……バーって!?

「今日は緊急の用なんだ。レイをたたき起してくれないか?」

「わかりました。ではしばらくお待ちくださいませ」

レ、レイって…!?

穂高の行動の意味が掴めなくて、ただただびっくりするだけのわたし。