「ほ、穂高…ここを超えるの!?」

「そ。ほら、手貸して」

学校の裏庭のコンクリートの塀の上に登っている穂高が、下から見上げるわたしに手を差し伸べる。

わたしたちは制服に着替えて誰にも会わないように裏庭までやって来ていた。

普通に正門を出るより目立たないし、ここから行くのが近道だという穂高のあとをついてきたけど。

正門より高い裏庭の塀に、穂高はいとも簡単に飛び乗った。

まぁ…ちょっとは見慣れてきてびっくりもしないけど、ね。

「…よっと」

穂高の手を取ると一気に上まで引っ張り上げられた。

「ほ、穂高、ここけっこう高いんだね…」

塀に登ってみてその意外な高さに足が竦む。

穂高はわたしの強張った表情に、わざと意外そうな顔をし、からかうように笑った。

「屋上から飛び降りた奴が、よく言うよ」

そう言いながら穂高はわたしの体を抱き上げると、塀の上に立ちあがった。

「ぎゃー!ちょっと穂高!!怖いってば!」

ふわり、と空に向かって飛び上る穂高に夢中でしがみつく。

穂高はわたしを抱えながら、トンっと学校の外側に軽く着地し、

わたしになるべく衝撃を与えないようにしてくれたのを感じた。

「お前、意外と軽いね」

わたしを抱える穂高の腕の逞しさにドキっとしたけれど、

「意外とって何よ!?」

わざと平然な顔でごまかした。