さすがにバスケ部の明日美はどんどんわたしたちをリードし、点を重ねていく。

わたしはサポートに回りながら、なんとか走り続けていた。

……ふらふらする。

走っているせいだけじゃない。

体が、『何か』を求めているように、わたしの言うことをきいてくれない嫌な感覚。

……貧血に、渇き。

わたしたちのチームは、B組の一番強い女子チームに、めずらしく競り勝っていた。

3ポイントリードでなんとかハーフタイムを迎えた。

「みんな、今日は絶対勝つよ!」

明日美が汗でびっしょりの顔をタオルでぬぐいながら、気合の声を上げた。

その時、B組の対戦相手のチームからどよめきが起こった。

彼女たちに囲まれて、さっきまでとは違い少し笑みを浮かべた「古河泉水」に、女子たちの視線が集中していた。

「……まさか、出るの?あの子…」

明日美が目を見開いて、驚きの声を上げる。

切れ長な瞳と、肩までのまっすぐな黒髪に制服姿の彼女が、チラリ、とわたしを見た……気がした。

……………え………?

顔と名前は知っているけれど、一度も言葉を交わしたことのない彼女のミステリアスな視線にわたしは戸惑った。