窓際のわたしと同じ列の一番後ろ。

わたしの席の3つ後ろに、うちの制服を着た見覚えのある整った顔立ちの男の子。

この1年のクラスにいるのが不思議なくらい大人びた顔のその人は、ニっと小憎らしいほどに魅力的に笑って手を振った。

「…ほ、穂高!?」

思い切り大きな声を出したわたしを先生がジロリ、と睨んだ。

「す、すみません…」

口を押さえて静かに穂高を振り返ると、彼は机に両腕を乗せながら小刻みに肩を揺らし笑いを堪えていた。

「…あいつ~18歳じゃなかったのか!?」

3日前に、屋上で交わした穂高とのキスが妄想のように頭を駆け巡る。

先生とのキスはごたごたの中で、そんなに意識することはなかったけれど、穂高とはあれ以来会うのは初めてなんだから。

次会ったら、どんな顔しようってそればかり考えてた。

先生とのキスは『死の匂い』がしたけれど、穂高のキスは『生きている快感』を感じた。

気持ち良すぎて、自分がどんな顔してたのか思い出すだけでも、恥ずかしいんだから。

でも、そんなことなんにも意識してないかのような穂高の表情に、わたしは少しほっとしたような、残念なような……。

「彼氏、同い年だったんだ?大人っぽいよね」

明日美がからかうように声をかけてきた。

「さぁ、いくつなんだろね?あいつよくわかんないから」

「は?」と首をかしげる明日美を前にして、わたしはため息をついた。

保健室の隣で寝てたり、陣野先生に連れ去られそうになるわたしを助けたり、屋上に突然現れてキスしたり、突然転校してきたり、ほんとわかんないやつ。

可笑しくなって、わたしはクスっと笑い、黒板に大きく書かれた『浅見穂高』という名前をホームルームの間中、じっと眺めていた。