江島先生が亡くなってから10日あまり。

学校は少しずつ平静を取り戻してはきたけれど、わたしは今日はとても緊張していた。

今日から、陣野先生が学校にやってくる、そう聞いたからだ。

こんな緊張しているのに、遅刻だなんて。

自分のマイペースぶりにちょっと呆れながら、もうみんな席に着いて誰もいない学校の廊下をひたすら走った。

「す、すみません!!」

思い切って1年A組の教室のドアを開け、すでに教壇に立っていた担任の湯田先生に向かって叫ぶ。

ベテランで強面の湯田先生は、ひどく眉を吊り上げてわたしを一瞥し、「まぁいい。今日は特別だ、座れ」そう言ってわたしを席に促した。

真ん中窓際の自分の席に座ると、前の席に座っている明日美が振り返って「ラッキーだったね。今日は特別だから。彼のおかげ、ね」と、意味深に笑った。

「は?彼って?」

意味がわからずに怪訝な顔で明日美に囁く。

教壇では湯田先生が何事もなかったように朝の連絡事項を伝え始めた。

明日美は振り返り、驚いたような表情で大きな瞳をさらに大きく開いた。

「神音の彼氏、今日転校してきたって、まさか知らないわけじゃないよね!?」

「!?」

明日美が目配せした方向を振り返る。