「穂高がここまで運んでくれたんだ…」

急にフラッシュバックのように、穂高に背中から抱きしめられた感触が甦る。

その腕の力強さに、頬を合わせた穂高の温もりに、わたしの頬は一気に紅潮した。

「お姉ちゃん……赤い、よ?お熱あるの…かな」

首をかしげる雪音にわたしは慌てて言った。

「ち、違うの!ちょっと思い出しちゃっただけで…」

わたしの慌てぶりにさらに首をかしげた雪音は、何かを思い出したように瞳を見開き、嬉しそうに言った。

「……『恋』?ほだかもね、お姉ちゃんのおでこに……えと…キス?…して、雪音が見たって言ったら……頬が赤くなったの…」

………ほ、ほだかが………!?

眠っているわたしのおでこにキスをして、それを雪音に見られた穂高が顔を赤らめて……なんて想像しちゃったわたしは、思いっきり湯気がでそうなほど真っ赤になった。

「雪音ね…キスって……どうしてするの?ってほだかに、訊いたの」

「!?」

ボボボって体中を火照らせるわたし。

「ゆ、雪音!そ、そんなこと、訊いたの!?」

ニッコリと、野バラのように、ありのままの笑顔で微笑む雪音。

「ほだかね…『キス』の反対は、『スキ』だからだよ……って」




……………ほ…だか…………。


温かい涙が頬を伝っていく。


心を閉ざしていた雪音さえも、こんなにも嬉しそうに語る穂高のあったかい心。


穂高、初めて逢えた『ヴァンパイア』が、あなたで……よかった。