ふわふわ、ふわふわ。

たった一輪で海を漂う水中花。

摘み取らないで。

お願い、わたしを水から離さないで。

枯れることになっても、構わない。

一緒に深く沈んでくれる『あなた』がいれば――――――。




「…お姉ちゃん……神音お姉ちゃん……」



「!?」


水中を漂う夢から覚めたわたしを心配そうに覗きこむ雪音のまだ幼い顔。

「…雪音………?」

雪音の顔を見て、一気に現実に戻る。

「…雪音、わたし…どのくらい寝てたの!?」

雪音は右手の指を2本たてて真剣な顔で呟いた。

「…2時間……くらい……」

寝ているベッドの周りを見渡す。

……自分の部屋で寝ていたことに少し安心する。

壁の掛け時計を見ると、夜中の12時を回っていた。

「雪音、ずっと見ててくれたんだ?……ありがとね」

雪音は照れたように微笑むと、わたしの手を両手で握った。

「…ほだか…連れてきたの。お姉ちゃんの手を握って…た。……哀しそうに」