ヴァンパイアに、死の花束を

わかってる。

これは陣野先生の挑発だって。

先生は、わたしの、『イヴ』の能力を試している。

自分でも信じられないくらいの地中から浮かび上がるような低い声で、わたしは囁く。

「陣野先生……もう、やめて。『わたし』は、そんな先生を愛したんじゃ、ない」

ふわふわ、ふわふわ。

水中花が漂う。

月の光を浴びて、愛しい人の姿を探す。

…でも、『愛しい人』の姿は…………どこにも、ない!!!

「……イヴ…いや、神音。一千年を超えて、私がどうしていたか、わかるか?突然姿を消してしまった君を私は探し続けた。君にはわかるはずだ。その体の中でも『感じる』はずだ。私の愛が、地獄の底ほどに深い、ということを……」

…………せ…んせい………!!

「…っ」

涙が次から次へと頬を伝う。

愛しい人に伝わらない。

愛しいのに伝わらない。

………イブ……あなたは、どれだけ切なかっただろう…………?

「『先生』。そんなんじゃ、伝わらないよ」

ふっと穂高の大きくて心まで包み込むような温かい手がわたしの頬に降りてきた。

わたしの頬の涙を優しくふき取る穂高。

「『イヴ』だってきっと、つらかったはずだ…」


…………穂高。