学校の正門はもう閉じられていた。

「穂高…どうする?」

すっかり人気のなくなって薄気味悪くなった学校を見上げて、わたしはため息交じりに呟いた。

「べっつに」

穂高は事もなげにそう言うと、正門の鉄格子の上に飛び乗った。

180センチの穂高と同じくらいはある鉄格子に手も使わずに飛び上った彼に、わたしはただ呆然と立ち尽くす。

彼は鉄格子の向こう側に飛び降りると、ガチャリ、と金属音を立てて正門を開いた。

「さ、どうぞ。神音嬢」

穂高は、いたずらっぽく笑って中からわたしに手を差し伸べた。

真っ暗な学校の敷地内を手をつないで歩き始める。

や、やっぱり薄気味悪い…。

夜の学校ってどうしてこう怖いんだろう……。

でも穂高は薄気味悪さなんて何も感じてないみたいにスタスタと歩いていく。

「穂高…こ、怖くないの…?」

「怖い?ヴァンパイアは夜行性だぜ。夜はヴァンパイアの大好物なの」

あっさりそう言う穂高は頼もしかったけど、わたしってヴァンパイアに向かないんじゃないだろうか…?

なんて、自分がヴァンパイアであることに疑いを持ち始めたわたし。

そのままわたしたちは、学校の裏手まで回った。