雪音を家に置いて、わたしと穂高は家を出た。

時刻は午後8時を過ぎていて、辺りはもうすっかり暗くなっていた。

「陣野は学校にいる。ヴァンパイアも吸血鬼も非常に用心深い生き物で、普段は正体を悟られないようにおおっぴらな行動は避けたり、気配を消すものだが、奴の気が昂ぶっているのを感じるんだ。恐らくイヴの一つ目の欠片を見つけて、その喜びを抑えきれないんだろう。学校に奴のエナジーを感じるんだ」

穂高は歩きながら説明してくれた。

「こんな時間にまだ学校にいるなんて、江島先生と一緒…かな?」

「……たぶん、ね」

お決まりの黒のパーカーのフードを被りながら、穂高はさっきまでとは違うクールな声で応える。

彼のヴァンパイアとしての「習性」なのかもしれない。

「戦闘モード」に入ったヴァンパイアの習性。

冷静で用意周到、用心深い彼らの……。

……わたしにも、そういう「習性」があるのかな?

まだ自分が吸血鬼だなんて信じられないけど。

「神音、無理するなよ。君はまだ能力に目覚めてないんだから」

フードを被っている穂高のぶっきらぼうな声が聴こえてきた。

こっちを見向きもしないけど。

「うん。穂高がいれば大丈夫」

わたしがそう言うと、穂高はそっとパーカーのポケットに入れていた手を出して、わたしの手を握った。

優しくて、時々クールで、ぶっきらぼう、でも、心の底からの温かさを感じる穂高。